下坂部遺跡

しもさかべいせき
出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』

  下坂部3丁目。1950年(昭和25)・1957年1966年の3次にわたる発掘によって確認された、弥生時代から古墳時代にかけて継続する複合遺跡。少量の弥生前期と中期の土器が混在するが弥生後期には遺構も明確となり、古墳時代も初頭の庄内式や庄内平行期の土師器〔はじき〕はないが、前期の布留〔ふる〕式の土師器および須恵器〔すえき〕各形式を遺存していた。弥生終末期から古墳時代初頭にかけての時期の仿製〔ぼうせい〕小形重圏素文鏡1面が出土した。直径3.8cm青銅製の儀器である。鏡と同時期の井戸と井戸枠も遺存していた。泉のような井戸に2枚の観音開きの扉を転用して井戸枠を作ったとみられ、扉材は等分に切断されて4枚が組み合わされていた。遺構床面には多量の土師器(高杯〔たかつき〕・小器台・小坩〔つぼ〕のセット)が散乱し、長さ4.4cmの滑石製勾玉〔かっせきせいまがたま〕も出土した。鏡・勾玉・多量の高杯などが出土していることにより井戸を中心とした祭祀の場を構成していたと推定される。他に木器類や鞴〔ふいご〕口なども出土している。須恵器にも大形甕〔かめ〕やランチ皿状のものがみられ、5世紀後半から6世紀初頭のものを中心としている。

執筆者: 村川行弘

   出土した重圏素文鏡は、1991年(平成3)3月29日、尼崎市指定文化財となった。

執筆者: apedia編集部

参考文献

  • 『尼崎市下坂部遺跡』尼崎市文化財調査報告13 1981

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