伝名月姫墓宝篋印塔

でんめいげつひめはかほうきょういんとう
出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』

  尾浜1丁目の八幡神社境内にある。2段よりなる反花〔かえりばな〕式基壇上に建っているが、残っているのは基礎と笠だけである。基礎は上2段で側面を壇上積み式に造り、各面内部に一重の輪郭を巻いて格狭間〔こうざま〕を入れているのは珍しい手法。笠は下2段であるが上を7段に造り、隅飾り〔すみかざり〕は二孤輪郭付きである。基礎や笠の形式は、鎌倉時代の後期としても古く、とくに隅飾りの下の幅に対する高さの比率が1.17弱であることがもっともよく塔の造立年代を示しており、後期も初頭に近い正安ころ(1300前後)のものと推定される。基礎と笠だけが元のものであるが、それぞれ珍しい形式手法をとっており、市内の宝篋印塔として最古であるだけでなく宝篋印塔としても貴重。なお、名月姫墓と伝える宝篋印塔が北摂能勢の名月峠にもあるが、年代は尾浜のものより少し新しい。

執筆者: 田岡香逸

参考文献

  • 『尼崎市史』第10巻 1974

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