如来院嘉暦2年笠塔婆
にょらいいんかりゃく2ねんかさとうば
出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』
寺町の当寺本堂の前方、塀を背にして建っている。花崗岩〔かこうがん〕製、残っているのは先端を欠失した塔身と基礎である。現高184.8cm、塔身147.5cm、基礎37.3cmの高さ。基礎の正面には孔雀を刻出している。方柱状の塔身の側背3面にはそれぞれ輪郭を巻き、蓮華座〔れんげざ〕上に書体を異にする名号〔みょうごう〕を配する。正面の上方には深い縦長の輪郭を彫り込み、蓮華座上に地蔵立像を肉厚に刻出し、円光背を薄肉彫りしている。下端には輪郭内に細長い台座上で合掌する坐像2体を薄肉彫りしている。左は法体〔ほったい〕の男性、右は垂髪の女性像であるから、銘文に見える造立者の二親、いわゆる被供養者像である。銘文は塔身正面の上と下の輪郭のあいだ全面にわたり5行を陰刻している。
銘文により、亡父母の33回忌にあたって孝子らが建てたものであることが知られる。石材が良質の御影石であり、形式手法もきわめて優れていることから、このころ石屋(現神戸市東灘区御影町)へ出張して製作した伊派の名工行恒の作品と推定される。尼崎地域だけでなく、このころの石造美術として代表的な遺品である。
参考文献
- 『尼崎市史』第10巻 1974
- 田岡香逸「尼崎如来院の嘉暦二年笠塔婆(1)(2)」『地域史研究』第11巻第3号・第12巻第1号 1982