尼崎本
あまがさきぼん
(尼崎切より転送)
(尼崎切より転送)
出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』
尼崎本は万葉集古写本の一種で、従来は巻第十二の断片が尼崎の某家に伝えられたので尼崎切と呼ばれたが、1931年(昭和6)に巻第十六の一巻が発見されたので、尼崎本と言われる。京都大学文学部国語研究室所蔵。古くから源俊頼筆とされてきたが、平安時代末期か鎌倉時代初期のものと考えられている。系統も不明であるが流布本系統ではなく「類聚古集〔るいじゅこしゅう〕」と共通する点が多く、古写本の少ない巻第十六の本文批評には欠かせない。有名な竹取翁の長歌(3791)の結句「持還来」が小字ながら繰り返し記されているのは他になく、沢瀉久孝はこれを原形と考えるべきかと述べている点注目される。短歌の場合万葉歌原文は料紙の上からつめて一行か二行で書いてあり、その訓は別行に頭を揃えて二行に書いてある。また朱筆で校異が加筆されており、まれに片仮名も見られる。
参考文献
- 『校本萬葉集』第1 首巻附巻 1931 岩波書店
- 沢瀉久孝『萬葉集注釈』巻第16 1966 中央公論社