尼崎市営バス
市域北部の住宅化にともなう南北交通確保については、すでに1929年(昭和4)検討が開始されほぼ市営バス開設の方針であったが、結局阪神電鉄傍系の阪神乗合自動車と報償契約を結ぶこととなり、1936年6月同社循環バス(現市域南部のみ)が開業した。
戦後も南北交通バス路線の必要性が尼崎市議会などで議論され、1948年3月運輸大臣の免許を得て、市営バスが同月8日に運行を開始した。最初に開設された路線は阪神電鉄高洲駅-鶴町間1.6km、通称「亀の子」の名で親しまれた定員33人の電気バスが運行した。その後順次路線が拡充されガソリン車も配置、1949年10月にはディーゼル車導入、1951年11月観光バス営業も開始した。1952年10月地方公営企業法施行により独立採算制となったが、開業以来1954年度までほぼ毎年赤字であった。1954年1月全国の中小都市に先駆けてワンマンカーを導入、1955年度には黒字経営に転じた。以降も路線拡充に努め、1968年3月末現在営業路線87.9km、車両数168、1日平均走行距離1万6,960km、1日平均乗客数は開業以来最高12万9,000人となった。しかしながら1962年度以降はふたたび収支が赤字となり、以降は交通事情の悪化による運行効率低下、乗客減少・運行コスト増大等による構造的赤字経営となった。このため、1977年10月には完全ワンマン化を達成するなど、現在にいたるまで財政再建に向けたさまざまな経営努力が続けられている。
尼崎市の人口の減少など社会経済環境の変化のなか、市営バスの収益の根幹をなす輸送人員は1967年をピークに減少を続けた。2000年代に入り、事業継続が懸念される厳しい経営状況となったことから、2010年10月には高齢者市バス特別乗車証の利用者一部負担制度を導入するなど収支の改善に努める一方、市は今後のバス事業のあり方についての検討を続けた。この結果、2012年7月6日、尼崎市公営企業審議会が持続可能なバス交通サービス提供のうえで市営バスの民営化が望ましいと答申し、これを受けた市は2013年2月に「市営バス事業の民営化に向けた取組方針」をまとめ、平成27年度末をもって事業を民間事業者に移譲する方針を決定した。2015年10月26日、市は阪神バス(株)との間に市営バス事業を移譲する協定を締結し、2016年3月19日をもって移譲を実施。これにより、同月20日から阪神バスによる路線運行が開始された。
参考文献
- 『市営バス30年のあゆみ』 1978 尼崎市交通局