尼崎藩は1777年(安永6)、従来発行されてきた、農民を札元とする御救銀札をすべて回収し、藩の掛屋が発行する銀札を流通させる方向に藩札制度を切り換えた。その線に沿ってさらに藩発行の銀札として出したのがこの引替役所銀札である。1818年(文政元)に発行されたが、日付は1777年発行の泉屋利兵衛銀札と同じ「安永六丁酉歳」となっている。額面10匁の同役所銀札はこれまた泉屋銀札同様、札番号を入れた兌換紙幣(尼の十二札)であったが、1830年ころ(天保初年)からは、札番号なしで乱発されるようになり、財政窮乏を糊塗する具と化して信用を失った。
執筆者: 八木哲浩
関連項目