水堂宝篋印塔
みずどうほうきょういんとう
出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』
水堂町1丁目の常春寺境内にある。かつては常春寺の門前を北へ、旧集落内の古道を少し入ると民家に接して建っていた。花崗岩〔かこうがん〕製。相輪を欠失しているが、元のものが常春寺に残り、復元すると総高240cm、八尺塔として造立されたものである。複弁三葉に隅も復弁の反花〔かえりばな〕式基壇上に立っている。反花式基礎は輪郭付格狭間〔こうざま〕入りで、西面に宝瓶三茎蓮〔ほうびょうさんけいれん〕を配し、塔身は各面線刻蓮華座〔れんげざ〕上の月輪〔がちりん〕内に金剛界四仏の種子〔しゅじ〕を配している。笠は下2段上6段の定形式、隅飾〔すみかざ〕りは二孤輪郭付きで、各面月輪内に胎蔵界大日の種子アを配している。相輪は宝珠を欠失し中途で折れており、下の請花〔うけばな〕には複弁入葉、上の請花には単弁八葉を配している。各部の形式手法には鎌倉調を残しているが南北朝時代の特徴が強く、その中期、1365年(正平20・貞治4)ごろの造立であろう。八尺塔といえば巨塔に属し、市内に残る宝篋印塔16基のうちほば完全なのはこの塔1基である。基礎に近江式装飾文の三茎蓮を配し、隅飾りの入面にアを入れているなどと合わせ、資料的価値が高い。
2006年(平成18)3月28日、 水堂宝篋印塔は尼崎市指定文化財に指定された。
参考文献
- 『尼崎市史』第10巻 1974