長遠寺鰐口
ぢょうおんじわにぐち
出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』
天文6年鰐口
寺町、長遠寺所蔵。青銅製で完全。径27.8cm、厚さ11.2cm。両面同文各3区に分けて撞座〔つきざ〕を陽鋳している。撞座は、連子〔れんし〕を中央1個・周囲6個の形に配した中房に素弁8葉を巡らした簡略形式である。銘文は正面に本銘、背面に追銘をそれぞれ外区の左右に分けて1行ずつ、本銘は計28字を陰刻している。
本銘の松江は現在の和歌山市、紀ノ川の北岸にあり、南北松江に分かれている。池の大明神は北松江にある。おそらく売りに出されたものを、天正5年に妙蓮という女性が買得し、日蓮宗の当寺へ寄進したものであることが、日蓮宗で唱える題目(南無妙法蓮華経)を配していることによって知られる。
至徳2年鰐口
青銅製で完全。径31cm、厚さ14.4cm。両面同文で各3区に分けている。撞座は、蓮子を中央1個・周囲6個の形に配した中房の周囲に細線を密接して放射状に巡らし、これを圏線によって囲い、その周囲に間弁入り単弁8葉を陽鋳している。銘文は1面の外区に左右に分け、各1行計22字を陰刻している。
銘文の河内野田は南海電鉄高野線の北野田駅付近の地(堺市)であるが、龍淵寺については不明。
嘉吉元年鰐口
青銅製で完全。径24.6cm、厚さ11.2cm。両面同文で各3区に分け、撞座を陽鋳している。撞座は、蓮子を中央1個・周囲6個の形に配した中房の周囲に櫛歯文を巡らし、これらをめぐって間弁入り複弁6葉を配している。銘文は1面の左右に分け、各1行計25字を陰刻している。
銘文の播州三方は、現在宍粟郡一宮に属するが、観音寺については不明である。
1983年(昭和58)3月24日、長遠寺鰐口は尼崎市指定文化財に指定された。
参考文献
- 『尼崎市史』第10巻 1974