尼崎市内の藻川の西岸に、上・中・下食満と三つの集落がある。ケマという地名は、大阪市の毛馬・秋田県の毛馬内の外に見られないが、古代関東には「毛野〔けぬ〕国」がある。（のちの上野〔こうずけ〕国・下野〔しもつけ〕国の範囲）。ケマ地名は少ないが、ケヤ（毛屋・毛矢等）は西日本にはかなり広く分布。ケは笥〔け〕から出て（木の音韻変化とも）食物を意味し、ケ（食物）マ（間=土地）と解せられる古代地名（アイヌ語地名説もある）。藻川の周辺には、猪名寺・椎堂・瓦宮・穴太・額田・久々知・坂部など古代氏族の居住地とみられる集落があり、その一つであろう。
執筆者: 落合重信
カテゴリ: 地名（古代・海浜）
