刊行物版『図説尼崎の歴史』序文
本市が市制80周年記念振興事業として、20年計画の新「尼崎市史」編集事業を開始したのは、いまから11年前の平成8年のことになります。市民参加の手法により、親しみやすい「生活・文化史」の視点を盛り込んだ新しい市史を編さんしていこうというこの試みの、最初の刊行物である市制90周年記念『図説尼崎の歴史』を、このたび皆さまのお手元にお届けすることができました。
本市は、すでに昭和41年から63年にかけて、『尼崎市史』全13巻・別冊1を刊行しています。この既刊『市史』に対して、今回は『図説』としての特徴を活かして、写真や図版を豊富に盛り込み、市民の皆さまにとってわかりやすく親しみやすい通史となるようこころがけました。同時に、既刊『市史』刊行後、あらたにあきらかとなった各時代・分野の歴史を盛り込み、また既刊『市史』では十分叙述することができなかった現代については、阪神・淡路大震災からの復興期までを対象としました。
この『図説』をお読みいただくとわかりますように、私たちが住むこの尼崎は、古くからこの国の歴史のなかで、たいへん重要な位置を占めてきました。
古代・中世には、淀川・神崎川を通して京のみやこと瀬戸内・西国を結ぶ、日本有数の港町でした。江戸時代には尼崎城が築かれ、天下の台所・大坂の西を守る尼崎藩の城下町として栄えます。近代に入ると、阪神工業地帯の中心都市として明治以来の日本の経済を支えました。
そういった、多様で豊かな尼崎の歴史を、ひとりでも多くの皆さまに知っていただきたい。その歴史のなかで、それぞれの時代を生きた人々の営みや努力、先人たちの積み重ねから学んでいきたい。そして、そういった豊かな歴史を大切にし、これからのまちづくりに活かしていく糧としたい。そんな思いから、この『図説尼崎の歴史』を刊行させていただきました。
本書を手にとってくださった皆さまには、ぜひこの『図説』を通して尼崎の歴史にふれ、それを守り活かす取り組みに加わり、あるいは見守り応援していただければと思います。
平成19年1月31日 尼崎市長 白井 文